不妊の女性は母性本能が足りない?

妊活や不妊治療を続けられている方の中には、

「他人の子供をかわいいと思えない」

「母性が足りないから妊娠できないのでは」

と考えて悩まれる方も多いのではないでしょうか。

「母性本能をくすぐられる」なんて表現もよくしますが、そもそも母性本能とはなんでしょう?

妊娠に影響したり、不妊の原因になったりするのでしょうか?

不妊と母性本能の関係についてまとめました。

「母性本能」って生まれつきあるもの?

私はこれまでの17年間で、およそ1万人以上の不妊で悩む女性のカウンセリングを行ってきました。そのほとんどの女性が、子供を見ても可愛いと思えない、妊婦さんを見ると苦しくなる、ということに苦しんでおられます。

妊活を経験した女性なら、その気持ちに共感できる方は多いと思う思いますが、妊活を経験していない女性にとっては、え?どうして子供が可愛くないの?可愛いと思えないのに赤ちゃんがほしいの?と思うかもしれませんね。

不妊で悩む女性のなかには、自分には母性本能がないから他人の子供が可愛いと思えず、そのせいで赤ちゃんが出来ないのでは?と思い詰めてしまうことがあります。

母性本能は、妊娠、出産のホルモンの変化によって引き起こされ、赤ちゃんにおっぱいをあげたり、泣いたり笑ったりする仕草を見て、お世話をしていくうちに、母性が育まれ動物的本能がどんどん高まっていきます。

妊活中は気持ちに余裕がなく、他人の子供を可愛いと思ったり、抱っこしても母性本能が誘発されないのはごく自然なことかもしれませんね。

妊活中に子供への苦手意識があっても、出産してホルモンが変化すると、眠っていた母性本能がむくむくと顔を出してきますから安心して大丈夫です。

母性本能は目に見えませんので、これが母性本能なのかな?というのは本人の感じ方によっても違いますが、母性本能に関わるホルモンは、妊娠から出産したあとも変化し続けています。

母性本能に関わるホルモン

妊娠後は母性行動のホルモン「プロラクチン」というホルモンがたくさん分泌されます。

プロラクチンは妊娠~授乳期にかけて増え、母乳をつくったり、ストレス耐性を強化したり、子育てのための体づくりに欠かせないホルモンです。

プロラクチンは産後の体調を回復させたり、すぐに妊娠しないように排卵を抑える働きもあります。授乳期中に生理がこないのは、プロラクチンの働きによるものです。

そのため妊娠前にプロラクチンがたくさん分泌されてしまうと、不妊の原因となり治療が必要になる場合があります。

子育てに必要なホルモンが不妊の原因になるのは、少し意外かもしれませんね。

スキンシップで増える「オキシトシン」

「母性のホルモン」と呼ばれているのが、オキシトシンというホルモンです。

「幸せホルモン」「愛情ホルモン」 とも言われていて、気持ちを安定させたり、意欲や集中力を上げる働きがあります。

赤ちゃんと触れあった時に幸福感を感じるのは、オキシトシンの影響によるもので、これは妊娠の前と後でも変わりません。

プロラクチンの分泌によって母性本能が高まり、オキシトシンによって幸福感が高まるということですね。

オキシトシンは赤ちゃんに限らず、好きな人や動物とスキンシップをすることでも分泌されますので、ストレスの多い妊活や不妊治療中は、意識してスキンシップを取るとよいですね。

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まとめ

母性本能は、生まれ育った環境や、個人の価値観によって感じ方も様々です。

妊活を経て妊娠した場合、出産までの不安を感じる方が多く、すぐには母性本能を感じられないことは大いに考えられます。

母性本能は、妊娠から出産後にホルモンが変化して少しずつ芽生えてくるものですから、母性本能のあるなしが直接不妊の原因になることはありません。

ですが、子供と接することにストレスを感じる状態は、ホルモンバランスにとってよくないですし、不妊原因に繋がる可能性もあります。

「母性」という言葉にこだわり過ぎると、妊活や不妊治療を通じて無事に妊娠・出産した後にも、「母親ならこれくらいできて当たり前」という母性神話に悩むことになりかねません。

母性の感じ方や表れ方には個人差がありますので、まずはできるだけストレスを避けながら、ゆったりとした気持ちで妊活や不妊治療に向き合いたいですね。