体外受精で受精した卵は、細胞分裂をしながら成長していきます。病院によって独自の評価方法を持つところもありますが、胚の成長段階と、キレイに分割しているかなど見た目のグレードによって、胚移植される優先順位が決められます。
胚のグレードは、分割胚と胚盤胞によってそれぞれの基準をもとに判断されます。グレードの高い胚は着床率も高くなります。
受精後の卵の成長
採卵した卵は、受精から移植までに4段階の成長過程があり、その成長スピードも着床率に関係があると考えられています。
自然妊娠の場合に卵管で受精した卵は、胚盤胞へと成長した5日目頃に子宮へと辿り着き着床します。
6日目に胚盤胞に育った胚は、着床率が低いとのデータがありますので、胚のグレードと成長スピードを考慮しながら、移植の優先順位が判断されます。
受精2日後:4分割胚
受精3日後:8分割胚
受精4日後:桑実胚
受精5日後:胚盤胞
胚の移植では、4~8分割胚まで成長した初期胚か、着床の手前まで育った胚盤胞のどちらかを子宮に戻して着床を待ちます。
どこまで分割した胚を移植するかは、採卵の数や、それまで行った移植の結果(着床しかかったなど)によって決めていきます。病院によっては胚盤胞の移植を推奨しているところもあり、フレッシュ胚を使用するか凍結胚にするかも病院によって様々です。
胚盤胞は、体内で着床するときの状態になりますので、体外で育てられる最大の分割胚となります。ここまで育つと、内細胞塊という赤ちゃんになる部分が確認できるようになります。
胚盤胞まで育った胚は、妊娠率の高い胚を見分けやすくなります。胚盤胞移植は、着床するときの状態で胚を子宮に戻すため、着床率が高くなると言われていますが、胚の成長が途中で止まってしまうと移植自体ができなくなるというリスクもあります。
初期胚のグレード
採卵した翌日、受精を確認します。その4時間後に胚が2分割されているかを確認するのですが、このときの分割スピードが早いと、形の良い胚に成長する確率が高いと考えられています。
受精後に胚の分割が進んでも、育った胚のすべてが移植できるとは限りません。初期胚移植では、グレード1~3までの胚が移植の対象となります。
初期胚のグレードは、Veeckの分類を採用している病院が多く、割球の数や大きさ、フラグメントの多さを比較して1~5段階で評価されます。
割球の大きさが揃っていて、フラグメント(細胞の断片)が少ないほどグレードが高くなります。
胚盤胞のグレード
胚盤胞のグレードは、初期胚と違い成長の進み具合を数字で表しています。グレード3以上まで育つと、内細胞塊(胎児になる部分)と栄養芽細胞(胎盤になる部分)の状態を、さらにA、B、Cの3段階のグレードに分けて表します。
グレード1:初期
グレード2:中期
グレード3:後期
グレード4:後期
グレード5:孵化
グレード6:孵化後
A
内細胞塊:大きい
栄養芽細胞:均一に整っている
B
内細胞塊:少し小さい
栄養芽細胞:不均一で整っていない
C
内細胞塊:不明瞭
栄養芽細胞:細胞の数が少ない
グレードの高いキレイな胚は着床率も高くなりますが、グレードの低い胚を移植しても、着床から出産まで順調に進むことも少なくありません。
グレードが高い胚でも着床しないことはあります。生命力の強さは見た目では判断するのは難しく、実際に移植してみないとわかりません。
流産や障害のリスクも胚のグレードとは関係がないといわれています。
アメリカ産婦人科学会(ACOG)の調査では、炭水化物(糖質)が少なく、タンパク質が多い食事をしていたグループは受精卵が胚盤胞まで育つ確率が1.4倍、移植して妊娠成功する確率は2.1倍も高かったという結果が出ました。
採卵までは、卵や鶏のささみなどタンパク質を意識した食事を心がけて質の良い卵を育てたいですね。