妊活とコレステロールの意外な関係

コレステロールってあまり体に良くないイメージですが、実は妊活女性に必須の栄養素というのはご存知でしたか?

書籍『卵子の老化に負けない「妊娠体質」に変わる栄養セラピー』を参考に、コレステロールと卵子の研究結果や、上手な脂質(油やコレステロール)の摂り方についてまとめました。

痩せ型よりぽっちゃり型の方が卵が育つ!?

痩せ型よりぽっちゃり型の方が卵が育つ!?

炭水化物、タンパク質、脂質の三大栄養素の中で、コレステロールは脂質にあたる栄養素です。なぜ妊活にコレステロールが必要なのでしょうか。

古賀文敏ウィメンズクリニックの院長は、ランニングに熱心に取り組んだり、食事に気を使っていて、ほっそりしたスタイルの良い女性ほど妊娠しにくい印象を受け、ふっくらした女性の方が採卵できる数が多いという経験から、医学的な視点で妊娠と食生活についてデータを取られました。

・野菜に偏っている
・油を避けている
・ファスティング(断食)をしている
・スムージーを飲んでいる

健康に良さそうなイメージですが、ヘルシー志向すぎて結果として栄養不足になっている傾向があります。スムージーは体に良いですので、それだけを食事として置き換えた場合だと思います。

古賀医師は、卵巣に卵胞がたくさんできるPCOSの患者にコレステロール値が高い傾向があることに注目し、コレステロールとAMH(卵子の残りの数を予測する数値)について調べました。

その結果、コレステロール値が高い女性ほどAMH値が高い(原子卵胞の数が多い)ことが分かったのです。(古賀文敏ウィメンズクリニック調べ)

総コレステロールとAMHの 関係のグラフ

さらに、妊娠の仕組みと脂質についても分かったことがあります。

コレステロールは分解されると、ケトン体というエネルギーに変わります。卵胞を成長させる女性ホルモンが上昇すると、卵胞液内や静脈血内でもケトン体が増えていました。

脂肪からできるケトン体が、受精や胚発育の段階でエネルギー源として使われている可能性が出てきたのです。

これは、同じ体のエネルギー源であるブドウ糖には見られない現象です。これまで脂質を気にして控えていた方にとっては興味深い研究結果ですね。

ですが、脂質をたくさん摂ればいいわけではありません。ヘルシー志向になりすぎず、コレステロール値をきちんと上げるバランスの良い食事が大事、というのが古賀医師の見解です。

卵は1日1個までという情報は古い!?

卵は1日1個までという情報は古い!?

アメリカの研究では、コレステロールなどの脂肪摂取率が36.9%から32.8%に低下したにもかかわらず、肥満率が増加していることが分かっています。

また、低脂肪+野菜が中心の食生活は、総コレステロールを下げず、病気のリスクが高まることがわかり、2015年には低脂肪は健康的ではないという事実が発表されました。ちょっと衝撃的ですよね。

この研究結果から、日本でも脂質の指標になる総コレステロール値が様々な診断基準から外され、コレステロールを多く含む食品の摂取制限が撤廃されました。

コレステロールの高い卵は1日に1個まで、というのを聞いたことがあると思いますが、もっと食べても大丈夫と言われ始めたのも2015年頃なんです。これは知らない人も多いのではないでしょうか。

コレステロール値と健康の診断基準が変わった結果、「卵は1日1個まで」は過去の常識になったわけです。

コレステロールの摂取量は低めに抑えることが好ましいものと考えられるものの、目標量を算定するのに十分な科学的根拠が得られなかったため、目標量の算定は控えた。

参考文献:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会報告書(PDF)

血液検査によるコレステロールの基準値

脂質代謝総コレステロール(T-chol) 120~220mg/dl
HDLコレステロール(HDL-chol) 40~70mg/dl
LDLコレステロール(LDL-chol) 70~139mg/dl
中性脂肪(TG) 50~149mg/dl

数値に問題がある場合は、コレステロールや脂質を控えた方が良いですが、正常範囲内であれば上手に補いましょう。ただ、すべての脂質が健康に良いわけではありません。

摂っていい油と悪い油の見極め方

摂っていい油と悪い油の見極め方

ここでは、脂質の代表である油について考えてみたいと思います。

体に良い油
・オリーブオイル
・オメガ3系(亜麻仁油、シソ油、魚油)
・バター、肉、ココナッツオイル、ヤシ油、MCTオイル

減らした方がいい油
・オメガ6系(紅花油、コーン油、大豆油)

NGな油
・トランス脂肪酸(マーガリン、ドレッシングやお菓子、パン、アイスクリームに使われるショートニング)
・時間の経った揚げ物の油

積極的に摂りたい油には、αーリノレン酸、EPA、DHAが含まれ、エネルギーに変わりやすい油です。

オリーブオイルや亜麻仁油が体に良いことは皆さんもご存知ですね。

控えたい油が、マーガリンやパンに使われるショートニングなどのトランス脂肪酸です。

トランス脂肪酸は、牛肉や羊肉、牛肉や乳製品に含まれる自然のものと、植物油をもとに人工的につくられたものに分けられますが、健康のことを考えると積極的に摂る必要はありません。

排卵障害や受精や胚の発達の障害になるという報告もあります。

農林水産省HP「すぐにわかるトランス脂肪酸」に詳しく書かれていますので気になる方は見てくださいね。

参考:農林水産省「すぐにわかるトランス脂肪酸」

日常的に食べているパンやお菓子など、すべてNGにしてしまうとストレスになってしまうので、食事にはオリーブオイル、おやつは質の良い油や栄養を含んだナッツやドライフルーツを取り入れるなど、上手に置き換えていきたいですね。

揚げ物の油も控えた方が安心ですが、揚げてから時間の経った油は「過酸化脂質」という酸化物質に変わり、細胞の老化にも繋がります。家庭で新鮮な油を使い、揚げたてを食べるのがおすすめです。

まとめ

体によくないイメージのコレステロールでしたが、様々な視点から必要性が見直されています。

コレステロールに限ったことではなく、すべての栄養素に意味があるため、最新の正しい情報を取り入れ、健康的な妊活に取り組みたいですね。

バランスのよい食事を心がけて、本来持っている力を引き出していきましょう。

参考文献:古賀文敏・定真理子『卵子の老化に負けない「妊娠体質」に変わる栄養セラピー』(2017)