海外と日本で不妊治療に違いはあるの?

日本は世界的に見ると、不妊治療が非常に多く行われています。

内閣府で公開されている2012年のデータによれば、全国で行われた体外受精は年間32万6000件にのぼり、過去10年間で3.8倍以上にも増えているそうです。

不妊治療先進国とされているアメリカで行われている体外受精が年間16万件といわれていますから、日本での治療件数がいかに多いかが分かります。

それでも日本では不妊治療に対する理解や保障が進んでいるとは、まだまだ言えません。

では、他の国ではどうなのでしょう?

海外の不妊治療事情について調べてみました。

不妊治療先進国アメリカ

アメリカ

アメリカでは、不妊治療のデータや結果が非常にオープンです。

なんと、体外受精の成功率がクリニック別にランキング化され、インターネット上で公開されているんです!

『Fertility Success Rates』
https://fertilitysuccessrates.com/

これはアメリカ疾病予防管理センター(CDC)によって収集されたデータをもとに作成されており、アメリカにあるIVFクリニックはCDCへのデータ提供が法的に義務付けられています。

州ごとのランキングもあるので、クリニックを選ぶ際の大きな助けになりますね。

ランキングで上位に入る事はクリニック側のメリットも大きいので、スピーディーで積極的な治療が行われ、技術が進歩するのも頷けます。

ですが、アメリカには社会保険がないので、すべての治療を個人で加入している保険か自費でまかなう事になり、実際にかかる費用は日本よりずっと高額になります。

そのため厳格な病院では、プラクティスコーディネーターと呼ばれる専門の職種が置かれ、治療日程や支払いに関する相談ができるようになっています。

フランスでは不妊は病気の一種とされる

フランス

フランスは少子化対策先進国として知られており、2010年には出生率が先進国としては高い2.0を超えています。

フランスでは不妊を疾病と位置づけて、42歳までという年齢制限はあるものの、人工授精(6回)や体外受精(4回)まですべての不妊治療が社会保険で全額補助されます。

それもつい最近の話ではなく、フランスで体外受精による初めての赤ちゃんが誕生した1982年からといいますから、かなり早い段階から国をあげて少子化に取り組んでいるんですね。

ただ、フランスの医療機関は完全分業制になっていて、検査ごとに(例えば血液検査だけであっても)別々の専門施設への紹介状が必要になり、検査の予約をしても数ヶ月待ちといったことが多いようです。

イギリスには不妊治療のガイドラインがある

イギリス

イギリスでは、国立医療技術評価機構(NICE)という公的機関が不妊治療に関するガイドラインを作成し、誰でも閲覧できる形で公開しています。

『NICE(National Institute for Health and Clinical Excellence)』
https://www.nice.org.uk/guidance/cg156/chapter/recommendations

これだけ見ると、安定した品質の不妊治療やサービスが受けられるのでは……と思えますが、イギリスでは公立病院と私立病院でサービスの質にかなり差があります。

公立病院で不妊治療を受ければ費用は基本的に無料です。
しかし受けられる治療やサービスは最低限で、検査を受けるだけで何ヶ月も待ったり、検査ごとに毎回違う病院を指定されるといったこともあるそうです。

私立病院は治療がすぐに受けられてサービスも充実していますが、費用は日本と比較してもかなり高額になります。この金額は、都市部と地方でも大きな差があるそうです。

イスラエルは体外受精が無料

イスラエル

イスラエルではなんと、体外受精にかかる費用全額を国が補助しています。

しかも、女性の年齢が45歳、第二子までなら回数の制限もないんです。驚きですね!

体外受精が一般的に高額なことを考えると、素晴らしい制度に見えます。しかしこれには歴史的、宗教的な思想が大きく影響しています。

ユダヤ人が多く暮らすイスラエルでは、「子どもを産まない女性は人として不完全だ」という考えが非常に根強いんです。

「産めよ、増やせよ」というユダヤ教の教えに基づくもので、さらには、ユダヤ人が歴史的に長く迫害を受けてきた事も影響しています。

イスラエルではこのような社会背景から、子どもを産まなければいけいないというプレッシャーがとても大きいために、不妊治療の制度が進んでいる事情もあるのです。

まとめ

特徴的な国の不妊治療事情をまとめましたが、各国の事情などもあり、どの国がすぐれてると一概には言いきれないことが分かりました。

ヨーロッパの保険制度は費用面では助かる事が多いかもしれませんが、クリニックで受けられるサービスでいえば、日本の方がはるかに手厚く丁寧です。

日本で暮らしていれば、ほとんどの場合に日本で不妊治療を受けることになりますが、海外の事情を知ると、自分が受けている治療やサービスがどれくらいの水準のものか判断する材料になりますね。

もし海外で不妊治療を受けることになった場合にも、ぜひ参考にしてみてください。