妊活や不妊治療を受ける20~40代の女性の約15%は、血糖値が少し高い糖尿病予備軍というデータがあります。
不妊検査では女性ホルモンを調べるために血液検査を行いますが、検査項目のなかには血糖値やインスリン (血糖を下げるホルモン)などの一般項目も含まれています。
血糖値やインスリンの値は不妊とは関係ないと思っている方も多いかもしれませんが、高血糖が及ぼす不妊の症状や改善方法ついて、分かりやすくまとめましたので参考にしてください。
血糖値とインスリンって何?
私たちの体は、炭水化物やイモ類、甘いお菓子などに含まれる糖分(ブドウ糖)をエネルギー源にして動いています。
疲れた時に甘いものが欲しい!と思うのは、エネルギーが足りなくてブドウ糖を補給しようとするからです。
食事から摂取したブドウ糖は、血液にのって全身に運ばれます。この血液中に含まれるブドウ糖を「血糖」といいます。
血糖は低すぎても高すぎてもよくないため、ある一定の数値になるようにコントロールされています。
この血糖コントロールをしてくれるのがインスリンです。
インスリンには、食後に上昇した血糖を速やかに処理してエネルギーに変えてくれる働きがあります。
インスリンの量が少ない、または分泌されても上手に働くことができないと、血糖が血液中に残ってしまい高血糖になります。
この高血糖状態が続くのが糖尿病です。
高血糖が排卵障害の原因に?
高血糖によって排卵障害が起こるなんてあまり聞いたことがないかもしれませんが、インスリン抵抗性(インスリンを出しているのに血糖が下がりにくい状態)によって、男性ホルモンが増えたり、排卵に影響を与えることが分かっています。
インスリンの過剰分泌と排卵障害
排卵障害を引き起こす多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)の患者さんを調べたところ、インスリン抵抗性のある人が多いという結果が出ています。
PCOSは男性ホルモンのアンドロゲンが多く分泌されている状態です。このアンドロゲンを抑えるホルモンを、インスリンが邪魔をしてしまうんです。
血糖値が高くてインスリンが過剰に分泌されると、アンドロゲンを抑制することができずに男性ホルモンが増え、PCOSや排卵障害を悪化させると考えられています。
血糖値は正常でも、インスリンの値が高いと血糖が下がりにくい状態になっているので要注意です。
女性ホルモンとインスリンの関係
妊娠に必要なエストロゲンとプロゲステロンは、インスリンの分泌にも影響しています。
エストロゲンが分泌している低温期はインスリンの効きが良くなるため血糖値が下がりやすく、プロゲステロンが分泌している高温期は血糖値が下がりにくいため、インスリンが多く分泌されるというメカニズムです。
女性ホルモンが乱れるとインスリンが変動しやすくなり、インスリンが過剰分泌すると不妊の原因となるため、両方のバランスが大切だといえますね。
血糖とインスリンの正常値は?
不妊検査では、女性ホルモンの値が気になりますが、血糖値とインスリンの項目もチェックしましょう。
不妊検査の場合、血液検査前の食事制限について指示がないこともありますが、血糖値は空腹時と食後では値が変わるので、念のため食事をしないか、食事の時間を覚えておくと参考になります。
< 血糖やインスリンの正常値 >
空腹時血糖値 | 60~100mg/dl |
食後の血糖値(食後2時間) | 60~140mg/dl |
インスリン | 2~10 μU/mL |
ヘモグロビンA1c | 4.3~5.8% |
< 糖尿病の診断基準>
①いつも血糖値が200mg/dl以上
②空腹時血糖値が126mg/dl以上
③ブドウ糖負荷試験を受けた値が200mg/dl以上
④ヘモグロビンA1c(1~2ヶ月前の血糖の状態) 6.1%以上(国際基準は6.5%以上)
この①~③のどれかに当てはまると「糖尿病型」、④も確認された場合は「糖尿病」と診断されます。
空腹時のインスリンが15 μU/mL以上だと「糖尿病予備軍」と診断されます。
基準値から少し外れている場合は、糖尿病になる可能性がある「境界型」と診断されます。
血糖値は1度の検査だけでは分からないことが多く、何度か検査を繰り返して条件が揃ったら確定診断されます。
血糖値は妊娠後にも影響する?
糖尿病で治療中の方も、血糖コントロールをしながら妊娠、出産された方はたくさんみえます。
血糖コントロールが良くないと奇形をもつ子どもが産まれる可能性が高くなるので、妊活中から適切な治療が必要になります。
ある研究調査では、妊娠前からきちんと治療を受けた場合の奇形率は2.1%で、健康な場合の1.7%と大きな差は見られませんでしたが、妊娠後に治療を開始した場合の奇形率は9%まで増えたという結果があります。
妊娠前からの血糖コントロールがいかに大切かということが分かりますね。妊娠後も、妊娠後期になると胎盤から分泌されるホルモンの影響で、インスリンが効きにくくなり高血糖になることがあります。
これは赤ちゃんの成長を促すために必要な過程なのですが、もともと血糖値の高い予備軍だとその可能性が高まり、妊娠高血圧症候群や早産、赤ちゃんの低血糖や黄疸など、母子ともに危険な状態になることもあります。
糖尿病に限らず、妊活や不妊治療中に血糖値について知っておくことは、無事に出産を迎えるためにも大切なことなんですね。
血糖値を下げるにはどうしたらいい?
ちょっと血糖値が高い、インスリン抵抗性があるという場合は、ホルモンバランスが乱れているサインかもしれません。インスリンを過剰分泌させないためには、血糖値を急激にあげないことがひとつの条件です。
ゆっくり噛んで食べる
早食いや食事量が多いと、血糖値が急に上がってインスリンが追い付かないことがあります。忙しくパパッと食事を済ませる習慣があれば見直しましょう。ゆっくり噛むこと、腹8分目にすることもポイントです。
食べる順番は野菜から
食べ順ダイエットの流行もあり、野菜から食べているのが定着している方も多いかもしれません。野菜など食物繊維が多い食品から食べると、腸の壁をコーティングして糖の吸収をゆっくりにしてくれます。
次に肉や魚類を食べると、たんぱく質や脂質に反応したホルモンの働きで胃腸の働きがゆっくりになるため、最後に炭水化物を食べると自然と糖の吸収がゆっくりになり、ダイエットにも効果的というわけなんです。
好きな食べ物を我慢するのはストレスになってしまいます。食事方法を見直すのもひとつの対策です。
基本の有酸素運動
有酸素運動は脂肪燃焼に加え、血糖を上手にエネルギー転換してくれます。
妊活中の運動に一番取り入れられているのがウォーキングです。
定番ではありますが、場所を選ばずお金もかからないので、気軽に始められるウォーキングは一番取り組みやすいのかもしれませんね。
週1~2回でもいいので、1日30分程度から始めてみてください。無理のない範囲で継続するのが血糖値を下げるカギです。
血糖を上げるホルモンは7つ存在しますが、血糖を下げるホルモンはインスリンたった一つしかありません。
血糖のために出来ることは意外とシンプルなことばかりです。体に負担をかけないためにも、今日から少しずつ意識してみてくださいね。
血糖値の上昇を抑える桑の葉茶って?
桑の葉は、古くから蚕(カイコ)のエサとして利用されていた葉っぱです。中国ではもっとも古い薬物書「神農本草経」の中で桑が生薬としても紹介され、血流の改善や滋養強壮に効果があるとして愛飲されてきました。
桑の葉にはミネラル、ビタミン、鉄分など豊富で、手軽に桑を摂れる桑の葉茶が人気を博しています。
ただ栄養価が高いというだけではなく、DNJ(デオキシノジリマイシン)という成分が桑の葉にしか入ってないことが最近の研究でわかったんです!
DNJは桑の葉特有の成分で、糖分解酵素(αグルコシターゼ)の働きを阻害して、小腸から糖分が吸収されないようにすることで血糖値を正常化する働きを持ちます。
運動や食事以外に、毎日飲むお茶で血糖にアプローチしてくれたら嬉しいですよね。桑の葉茶は血糖コントロールやダイエットにも注目されています。
まとめ
血液検査の正常値から外れている=糖尿病というわけではありませんが、血糖値とインスリンは、排卵障害やホルモンバランスの乱れなど、妊娠の過程に大きく影響します。
将来的なことも考えると、血糖値を整えておいた方が安心です。
食べたものによって血糖が上昇するため、まずは食生活から見直して、高血糖になりにくい体づくりをこころがけてくださいね。