採卵までの流れ・卵子を成長させる方法

体外受精が始まると、採卵のために卵子を育てる治療が始まります。「たくさん採卵したい」「卵の質を重視したい」「なるべく体に負担をかけたくない」など、何を重視するかで使う薬の種類や量は変わります。まずは、採卵の主な流れをご紹介します。
採卵までの流れ

自然周期療法

自然周期で卵子を育てる方法は、排卵の時期をコントロールせずにホルモンの数値や、卵胞の大きさを見極めながら採卵のタイミングを決定していきます。

自然周期療法では、排卵誘発剤を使わずに自然に育った卵を採卵します。周期によっては卵胞が育たなかったり、排卵直前で黄体化ホルモンの数値が急に上がってしまって、採卵出来ないこともありますが、体への負担がないので、毎月でも採卵することができます。

排卵誘発剤を使わないので、「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」になる心配がなく、卵胞の質が低下しにくいというメリットもあります。卵巣刺激法で卵の育ちにくい方や、高齢で排卵誘発剤が効きにくい方に試して欲しい方法です。

最小限の薬を使って採卵する「低刺激周期採卵法」と、まったく薬を使わずに卵を育てて採卵する「完全自然周期採卵法」があります。

自然周期療法
メリット 注射の回数が少ない(しない)
毎月でも採卵が可能
採卵時の体への負担が少ない
卵巣への負担が少ない
デメリット 卵子の数が1~2個と少ない
採卵前に排卵してしまうことがある
卵が育たなかったりや受精せずに移植できないことがある
胚数が少ないので胚盤包移植ができないことがある
採卵時期が直前まで分からない

卵巣刺激法

卵巣刺激法は、排卵誘発剤(FSH製剤、hMG製剤、クロミフェンなど)を使って卵巣を刺激して、一度にたくさんの卵子を育てる方法です。

一度の採卵でたくさん卵子がとれると受精する確率も高くなりますので、その後の選択肢も広がります。一般的に行われるショート法とロング法では、AMHの数値が基準となります。AMHが10~25pM/mLの方はロング法、10未満の方はショート法をすすめられます。年齢が40歳以上の方は、AMHが10以上あってもショート法になることがあります。

卵巣刺激法
メリット 複数の卵子を育てることができる
受精卵になる確率が上がる
1度の採卵で複数回の移植ができる
採卵のスケジュールが立てやすい
デメリット 薬の量が増えるほど体への負担が大きくなる
注射などの薬代が高くなる
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になる可能性がある
薬の副作用(頭痛、吐き気など)

採卵までの流れ

生理が始まって2~3日頃に、血液検査で各ホルモン値と、残留卵胞がないかを確認します。この時に卵巣の中に小さな卵胞(前胞状卵胞)がいくつあるのかも確認しておきます。卵胞が何ミリに成長しているかを超音波検査でチェックします。血液検査ではLHとE2のホルモン値を調べます。

卵胞の大きさが16mm以上で、黄体化ホルモンの数値が上昇していないことを確認して、E2の数値が卵子1個につき200250pg/mlになったら採卵日を決定します。

卵子を成長させる方法

卵子を成長させる方法

  • ショート法

ショート法は、生理が始まって2~3日頃に点鼻薬や、hMGの注射など薬の力を借りながら卵胞を育てていきます。hMGの注射は、約1週間、毎日打つ必要がありますので、通院して病院で注射してもらうか、自宅で自己注射するかを選ぶことができます。自宅で自己注射をする場合も、2~3回は通院して、ホルモンの数値や卵胞の大きさを確認します。

採卵予定の34時間~36時間前に、hCGの注射をして卵を排卵させます。

  • ロング法

ロング法は、排卵スケジュールを整えるために、採卵前の周期から治療に入ります。前周期にピルを飲んだり、高温期の半ばから点鼻薬(GnRH剤)を使って自然に排卵しないようにします。

ピルの服用をやめると2~3日程で生理が来ます。
生理が始まると、ショート法と同じように、hMGの注射など薬の力を借りながら卵胞を育てていきます。

採卵予定の34時間~36時間前に、hCGの注射をして卵を排卵させます。

  • アンタゴニスト法

生理が始まると、点鼻薬を使わずにhMGの注射で卵胞を育てていきます。卵胞の直径が14mmくらいまで成長したらGnRHアンタゴニスト製剤を注射して、成熟する前に排卵しないようにします。点鼻薬で排卵を抑えないため、卵胞が育ちやすくなります。

採卵予定の34時間~36時間前に、hCGの注射をして卵を排卵させます。

まとめ

ロング法は採卵の数は少なめですが、採卵のスケジュールが立てやすく、育つ卵胞の大きさが均一で質の良い卵子が期待できます。ショート法は、体への負担は大きくなりますが、一度にたくさんの卵胞を育てることができます。アンタゴニスト法では、点鼻薬で排卵を促すことが出来るため、卵巣への負担が少なくなります。

使う薬の種類や量など組み合わせは色々ありますので、お医者さまや培養師の先生にメリット、デメリットを確認して、納得のいく方法を選んでいただければと思います。

採卵後も受精や分割胚へと進んでいくには、卵子の質も大切です。治療をしながら、生活習慣や食生活などを気をつけられている方も多いと思います。頑張りすぎてストレスとなってはいけませんが、体に良いことは取り入れながら、より良い卵子を育てていきたいですね。